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【勉強会開催報告】BOCで救える命がある! 口腔ケアと集中治療

お知らせ

東京女子医科大学病院麻酔科、集中治療科で従事したのち、現在は聖マリアンナ医科大学病院麻酔科・集中治療センターで集中治療医としてご活躍されている佐藤 暢夫先生に、口腔ケアの必要性と国内の集中治療事情に関してお話いただきました。

── 人工呼吸器関連肺炎に関して

通称VAPと呼ばれている「人工呼吸器関連肺炎」は、気管挿管下の人工呼吸患者に、人工呼吸開始48時間以降に新たに発生した肺炎のことをいいます。この肺炎は人工呼吸器患者の9~27%に発生しており、死亡率は30%と報告されています。

人工呼吸器を1日つけるごとに、人工呼吸器関連肺イベント発生率は1%ずつ増加します。つまり、人工呼吸器を1日でも早く外すことが死亡率を減らすことにつながるといえるでしょう。しかし、むやみに抜けば病気の悪化などにもつながるため、人工呼吸器離脱に関して、3学会で合同のプロトコルが作成されました。

—— 肺炎にならないためにはどうしたら良いのか

なぜ人工呼吸中に肺炎になりやすいのでしょうか。例えば、意識のある人であれば、口内に異物が入っても咳として出すことが出来ますが、人工呼吸中はできません。そのため、人工呼吸中は汚染されたエアロゾルを吸入してしまったり、唾液の分泌低下によって細菌が増殖してしまったり、デンタルプラーク(歯垢)が溜まったりすることで肺炎への感染経路となってしまいます。

こうした肺炎を防ぐために、
•手指衛生を確実に実施すること
•人工呼吸器からの離脱ができるか毎日評価すること
•人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しないこと
が効果的です。

さらに出来ることとして、2010年の「米国ヘルスケア協会人工呼吸器バンドル」では「クロルヘキシジンを用いた口腔ケアを毎日行う」ことが進められています。

── 口腔ケアの意義は

人工呼吸器関連肺炎を予防するための口腔領域の関与は、口腔ケアと嚥下機能維持があります。口腔機能を管理することで、術後肺炎や誤嚥性肺炎、感染症心内膜炎のリスクを減少させることができます。こうした口腔ケアの意義を国も認識しており、「周術期等口腔機能管理料」という算定ができるようになっています。

論文でもその効果は証明されています。例えば、食道がん患者において術前の歯磨きは術後肺炎の発生率を減らすことや、口腔衛生ケアの一環としてクロルヘキシジンマウスウォッシュまたはジェルを使用すると、重症患者の人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生率が26%から約18%に減少することが発表されています。

実際の口腔ケアの方法としては、1~2人で行うブラッシング方を用いたブラッシングケアを1日1~2回実施し、維持ケアとして口腔粘膜へ湿潤剤を塗布するケア等を、ブラッシングケアと併せて1日4~6回実施することが望ましいとされています。

── 集中治療とは

人工呼吸器管理を受けている多くの患者様は集中治療室で治療を受けています。そもそも、集中治療とは、「生命の危機に瀕した重症患者を、24時間を通じた濃密な観察のもとに、先進医療技術を駆使して集中的に治療する」ことを指します。その集中治療のために高度な新両利きを整備した診療空間を「集中治療室」といいます。

新型コロナウイルスの際にも話題になりましたが、日本は他国に比べ圧倒的に病床数が多い国です。しかし、ICUのベッド数は最低水準にあります。日本の医師が34万人いる中、集中治療専門医は約2,000人しかおらず、非常に貴重な職種です。集中治療専門医は約7割が麻酔専門医・救急専門医で占められています。

コロナ禍において、人工呼吸器管理が非常に難しいため、集中治療専門医が活躍しました。いま、すべての集中治療室に集中治療専門医がいるわけではありません。24時間体制で患者様を診るためには7人以上でチーム体制を組む必要がありますが、まだまだ専門医は不足しています。集中治療専門医専従は患者予後を改善するというデータもあるため、今後の課題といえるでしょう。

佐藤先生は「手術が終わったあとも口腔が健康な状態を保てないと、なにかのきっかけで敗血症になって感染症で亡くなってしまうということがある」と述べ、術前・術後も、しっかりケアしていくことが大事であると教えてくださいました。
まず知ってもらうこと、啓蒙活動が大切であるとも仰っておられました。

今後も、BOCグループ一同、継続して学んで参りましょう!次回のセミナーもお楽しみに!
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一般社団法人訪問看護支援協会認定「BOCプロバイダー」は、病院や在宅医療、訪問介護の現場で基本的な口腔ケアを行うBOCプロバイダーの認定資格講座です。

※BOC:Basic Oral Care
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