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【イベントレポート】看護のためのアート鑑賞

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概要報告

2021年8月2日、CancerX、BOCプロバイダーグループ、mamoru2の合同ワークショップ「看護のためのアート鑑賞(Visual Thinking Strategies入門編)」がオンライン(zoom)で開催されました。

こちらは、2021年2月に開催されたWorld Cancer Week 2021(主催:CancerX)における「課題発見分科会」から派生した企画で、医療現場にある違和感レベルの課題を対話を通して深掘りし、日常の当たり前を疑い、バイアスを外すことで課題の本質に気づき、解決のヒントにするためのワークショップ型勉強会です。 医師や看護師だけでなく、学生、電機メーカー、靴メーカーや海外からなど、様々な業種の方々が70名ほど参加しました。

印象に残っているのは、「医療者としては見慣れた夜間の病院風景」も、夜間の病院に出入りしない方々にとっては違和感ばかりだということ。

アート作品や何気ない日常の写真一枚を時間をかけて観察し、対話により見えてくる新たな解釈、「夜の病院なのに明るすぎる」や「人が一人もいない」と言ったコメントから、自分が無意識に持っている医療者としてのバイアスに気づく瞬間がありました。

今回のワークショップを通して、「さまざまな社会課題を解決に導く上で必要なこと」は、まずは楽しく、自由な雰囲気の中で生まれてくるアイデアや、対話をしようという姿勢だと感じました。医療現場の課題に対しても、まずは現場の意見を対話を通して深掘りし、力を合わせて楽しみながら、課題の本質を見つけたいと思います。

 

CancerXとは?

「がんと言われても動揺しない社会」の実現を目指すCancerXは、がんに関する課題を、業界や職種などの立場を超えて掛け合わせ、コレクティブインパクトにより解決に導きます。

がんに関する課題とは、働き方や移動、医療経済、治療選択、外見(アピアランス)に関するものなど様々です。

 

2019、2020年のCancerX summitを経て、2021年2月にWorld Cancer Week 2021が開催されました。がんに関する30を超えるセッション(課題)が、一週間にわたり開催され、今回の「看護のためのアート鑑賞」を主催する課題発見分科会もその中の一つです。

 

 

課題発見分科会とは?

がんに関する課題は、少なくともWorld Cancer Week 2021のセッション数だけ存在しますが、課題として認識されていない違和感レベルのものが、まだ日常に多く埋もれています。

日常に埋もれている課題は、「そこにあって当たり前」というバイアスの中にあるため、違和感に気づくにはトレーニングが必要です。

課題発見分科会では、日常にある違和感を写真に撮って可視化し共有すること、また対話型鑑賞(VTS)を多様なメンバーで行うことでバイアスを外し、課題の本質を見極め、解決のきっかけにすることを目指しています。

 

BOCプロバイダーが行うVTSの課題

この手法は医療現場にも生かすことができ、BOC(Basic Oral Care)プロバイダーグループでは、看護教育にVTSを取り入れています。

日常の口腔ケア(BOC)に関する課題、違和感を写真にとって可視化し、BOCプロバイダー同士で対話をしながら違和感の理由を深掘りしていきます。そこから見えた課題に対しアプローチし、実際に解決できた事例もあります。

「日常にあってあたりまえに感じているが、実はへんかも?」といった違和感レベルの課題に気づき対話をしますが、看護師同士で話していると、医療者としてのバイアスが外れず、課題を深掘りする際に難しさを感じることがあります。

そのため、今回のワークショップでは、医療現場の課題を医療者に限らない「多様なメンバー」と行うことで、看護師のバイアスを外すことを目的に開催されました。

 

対話型鑑賞(VTS=Visual Thinking Strategies)とは

絵画や写真などのアート作品を複数人で鑑賞し、各々の感じる気持ちや発見を思い思いに交換しあうことで、自らのバイアス(先入観)に気づき、「課題発見」をし、同時にコミュニケーションを深める行いです。 海外の美術館や教育機関などでは積極的に行われている所が多くあります。

今回は、このVTSを最終的には医療現場の写真を用いて行うことで、現場では当たり前となって見過ごしている「違和感」を深掘りするところまで行います。 こちらの画像は、今回の会の様子を描いたグラフィックレコーディングです。

まずはじめに、ブレイクアウトルームに分かれて簡単な自己紹介を行なったのち、数多くのVTSを国内外で行なってきた主催者の一人、手嶋州平さんのレクチャーによって、VTSの方法を教わりました。

VTSの方法を簡単に述べると、絵や写真などの芸術作品を1分ほどまずただ眺めます。 その後、参加者同志で感じたことを話しあい、意見をじっくり聞き、その意見を踏まえてまた感じたことを話します。 手嶋さんいわく、「求められているのは正解ではない」ので、参加者それぞれが思い思いに感じたことや気づきを述べあい、自分が考えもしなかった意見がたくさん出てくる体験を参加者同士で共有しました。

 

廊下にゴミ箱が飛び出てる?

絵画、アート写真を用いてトレーニングを行い、最後に病院内の写真を用いてVTSを行いました。

普段は何気なく通りすぎているただの廊下の写真なのに、こんなことまで気づくの?!という面白い見解がたくさん溢れ出しました。医療者にとっては当たり前で、よく見る夜間の病院風景に対し、「夜の病院なのに明るすぎる」や「人が一人もいない」といったコメントがあり、バイアスがボロボロとこぼれ落ちる感覚でした。 終了後には参加者からも「あっというまの時間」「とても面白かった」「自分の固定観念に気づいた」「いろいろな方の考えに触れる貴重な機会だった」という声を数多く聴くことができました。

CancerXおよびBOCプロバイダーグループでは、今回のVTSトレーニング、また課題写真から抽出したたくさんの気づきを、医療に関わる課題解決のヒントにしながら活動を継続していきます。

引き続き活動をウォッチして、情報をいち早くキャッチしていただけたら幸いです。

登壇者と今回ご協力いただいたチーム

CancerX課題発見チーム

大浦イッセイ(表現家/インダストリアルデザイナー/NPO法人 まもるをまもる 代表理事) 谷山 伸子(ファッションスタイリスト/ヘアメイクアップアーティスト) 手嶋 州平(GAiGO鹿児島外語学院/Artful Mind Project代表) 和田 芽衣(写真家) 西垣 孝行( 森ノ宮医療大学 臨床工学科 准教授/臨床工学技士/応用情報科学博士/ NPO まもるをまもる 代表理事) 横山 太郎(医療法人社団晃徳会 横山医院在宅・緩和クリニック 院長 医療補助動画プロジェクト代表) 長縄拓哉(デジタルハリウッド大学大学院 / 歯科医師 / 医学博士)

BOCチーム*

藤戸 麻由(看護師 / BOCプロバイダー / BOCインストラクター) 岡﨑 麻衣(看護師 / BOCプロバイダー / BOCインストラクター) 山本 奈奈恵(看護師 / BOCプロバイダー / BOCインストラクター) 政時 仁美(看護師 / BOCプロバイダー / BOCインストラクター) 深谷 時子(看護師 / BOCプロバイダー / BOCインストラクター) 雜賀 真紀(看護師 / BOCプロバイダー / BOCインストラクター)

グラフィックレコーディング:大道レイチェル

 

*BOCプロバイダー:一般社団法人訪問看護支援協会が認定するベーシックオーラルケアの認定資格者。医療や介護の現場でオーラルケアを行い、さらにその重要性や方法を周囲に拡散するリーダーとしての役割を持つ。

https://boc-provider.info/